民事再生法とは

民事再生手続とは

 民事再生手続とは、債務超過の恐れのある企業や、資金繰りの破綻などの理由で経営に行き詰まったものの再建の見込みのある企業について、裁判所が選任する監督委員の監督のもとで、従前の経営者が中心となり債権者等の協力を得て事業の再建を図る手続です。

 民事再生手続は、同じく会社再建のための手続である会社更生手続に比べて、手続の進行が早く、早期に会社の再建を図ることができることに特徴があります。民事再生手続では、会社が自ら主体的に手続を進めることにより、再建をしていくことになります。

民事再生手続の流れ

 民事再生手続の流れは、次のとおりです。末尾の「民事再生手続の流れ」図をご覧ください。

(1)申立て

 会社は、裁判所に対して民事再生の申立を行います。裁判所は民事再生の申立を受理すると、会社の債務(金融機関からの借入金や仕入先に対する買掛金)の弁済(支払うこと)を禁止することなどを内容とする「保全命令」を出します。

 裁判所から保全命令が出された後も、会社は業務を継続することができます。会社の代表者は、会社経営の目的で会社の財産を管理・処分する権限を失うことはありません(民事再生手続において、後述のように管財人が選任され、従前の会社の代表者が会社財産の管理処分権限を失うことは、極めて例外的な場合に限られます)。この点は、会社更生手続が、裁判所が保全管理人または管財人を選任することにより、会社財産の管理処分権限を全て保全管理人または管財人に集中させ、従前の経営者を経営から排除するのと異なります。

(2)監督委員の選任

 保全処分がなされるのと同時に、裁判所は監督委員を選任します。監督委員には弁護士が選任されることがほとんどです。民事再生手続では、通常、弁護士が監督委員に選任されます。監督委員は、裁判所に選任されますが、「管財人」とは異なり、会社財産の管理や処分、経営を直接行いません。監督委員は、会社が進める民事再生手続が、法律や裁判所の命令に従って行われているかをチェックしたり、会社の財務内容の調査を行ったりするのが主な職務です。監督委員は、会社の財務内容の調査を行うにあたって、公認会計士を補助者とします。

(3)再生手続開始決定

 民事再生手続を申立たしばらく後に、裁判所は、会社について再生手続開始決定を行います。再生手続開始決定とは、正式に民事再生手続を始めることの決定であり、この決定がなされてから、再生のための様々な手続が始まります。

 具体的には以下のような手続があります。

①債権調査手続

 再生手続開始決定後に、裁判所から債権者宛てに通知が送られ、その中に再生債権の届出用紙が入っています。そして、再生債権者は、この用紙を用いて再生債権の届出を行います。

 届出があった再生債権に対しては、債務者である会社がその内容をチェックして認否を行います。したがって、会社としては、届出債権をチェックしなければなりません。また、別の債権者から他の債権者の届出債権に対して異議が出される場合もあります。

 このような債権調査手続を経て、各債権者がどのような債権を有しているのかを確定していくことになります。

②財産評定手続

 再生手続開始決定がなされた後、開始決定の日における会社財産の内容を調査して財産目録や貸借対照表にまとめます。これを財産評定といいます。

 この財産評定は、実際に会社の財産がどのような状況にあるかを明らかにするためのものであり、その評価基準は、処分価格に基づいて行うことを原則とします。したがって、仮に会社を直ちに清算し、その財産をすべて処分して換金した場合に、会社の債権者がどの程度の回収を見込むことができるかが判断基準となります。

③裁判所への報告

 再生手続開始決定がなされた後、裁判所が指定する日までに、会社の財産や業務の状況の報告をすることになります。

(4)再生計画案の作成

(3)で述べた債権調査や財産評定の結果、会社の今後の事業計画に基づいて、債務の弁済計画を主な内容とし、会社の再建計画を盛り込んだ「再生計画案」の作成を行い、裁判所へ提出します。一般的には、多くの場合、債務の免除と免除後に残る債務の分割弁済がその内容になります。

 再生計画案の内容については、監督委員から意見書が出されます。

 再生計画案が提出された後、裁判所は、債権者集会の日時を決定し、債権者集会の開催の通知とともに、再生計画案及び監督委員の意見書を債権者宛に発送します。

(5)債権者集会の開催と再生計画案の決議

 債権者集会では、会社が提出した再生計画案についての決議を行います。債権者は、その再生債権の金額に応じた議決権を持つことになります。

 再生計画案が可決されるためには、債権者集会に出席して議決権を持っている再生債権者の過半数で、かつ、議決権額の総額の2分の1以上の同意が必要です。

 債権者集会で再生計画案が可決されると、裁判所が、そのほかの法律上の要件を充たしていることを確認したうえで、再生計画の認可決定を行います。この認可決定が確定した後は、会社は、再生計画案にしたがって債務の弁済を行うことになります。

 再生計画が認可された後、長い場合には3年間、監督委員が会社を監督します。

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