【資料】民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案 に関する意見

事業再生研究機構の「倒産手続のIT化研究会」が、法制審の民事訴訟法(IT化関係)部会のパブリックコメント手続に対して意見書を提出しました。「倒産手続のIT化研究会」には,当研究会の、上野弁護士、俣野弁護士,菅野弁護士が参加しています。内容は以下の通りです。

民事訴訟法(IT化関係)等の改正に関する中間試案に関する意見


倒産手続の IT 化研究会

当研究会は,法制審議会民事訴訟法(IT化関係)部会が公表した「民事訴訟法(IT 化関係)
等の改正に関する中間試案」について,以下のとおり意見を述べる。なお,当研究会の意見は,
近い将来において倒産手続の IT 化に関する立法もなされることを想定し,主に倒産手続の IT 化
への影響という観点から検討をしたものであり,意見を述べる対象も主に倒産手続の IT 化に影響
すると考えられる論点を採り上げている。

第1 総論

1 インターネットを用いてする申立て等によらなければならない場合

訴えの提起等裁判所に対する申立て等のうち書面等をもってするものとされているものに
ついて,電子情報処理組織を用いてすることができるものとした上で,電子情報処理組織を
用いてしなければならない場合について,次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】
申立てその他の申述(証拠となるべきものの写しの提出を含む。以下「申立て等」という。)
のうち書面等(書面,書類,文書,謄本,抄本,正本,副本,複本その他文字,図形等人の知
覚によって認識することができる情報が 記載された紙その他の有体物をいう。以下本項にお
いて同じ。)をもってするものとされているものについては,電子情報処理組織(裁判所の使
用に係る電子計算機(入出力装置を含む。以下同じ。)と申立て等をする者の使用に係る電子
計算機とを電気通信回線で接続した電子情報処理組織をいう。以下同じ。)を用いてしなけれ
ばならない。ただし,委任を受けた訴訟代理人(民事訴訟法(以下「法」という。)第54条
第1項ただし書に規定する訴訟代理人を除く。以下本項において同じ。)以外の者にあっては,
電子情報処理組織を用いてすることができないやむを得ない事情があると認めるときは,こ
の限りでない。

【乙案】
申立て等のうち書面等をもってするものとされているものについては,委任を受けた訴訟
代理人があるときは,電子情報処理組織を用いてしなければならない。

【丙案】
電子情報処理組織を用いてしなければならない場合を設けない(電子情報処理組織を用い
てする申立て等と書面等による申立て等とを任意に選択することができる。)。

【意見】
基本的に甲案に賛成であるが,委任を受けた訴訟代理人についても,やむを得ない事情がある
と認めるときは,電子情報処理組織によらない申立て等を認めるべきである。なお,電子情報処
理組織によらない申立て等を認める場合も,やむを得ない事情の有無は,個別の訴訟行為ごとに
判断がなされ,訴訟手続全体は例外なく電子情報処理組織を用いるものとすべきである。

【意見の理由】
近時の IT 技術の飛躍的な発展や普及を前提に,民事裁判手続全体をより利用しやすく,効率的
に運営できるようにするためには,例外なく手続の IT 化を進めるべきであり,書面等による申立
て等はやむを得ない場合に限定し,極力認めないこととすべきである。この点,(注1)では,甲
案を目指しつつ,段階的に,丙案から乙案,乙案から甲案へ移行する考え方が紹介されているが,
反対である。IT 化をすることの効果は手続全体が IT 化されることで最大限に発揮されるものと
いうべきであることや,IT 技術の進歩のスピードが速いことからすると,丙案から乙案,乙案か
ら甲案へ移行する基準を設けることは困難で不明確なものにならざるを得ず,民事裁判手続全体2
の IT 化がいつまでも実現できなくなるおそれがあると言わざるを得ない。
書面等による申立て等を認める場合であっても,書面等を使用することは最小限の範囲とすべ
きであるから,「やむを得ない事情があると認めるとき」に当たるかどうかは,訴訟行為ごとに判
断されるべきであり,当該行為について「やむを得ない事情がある」と認められない場合は,イ
ンターネットを用いてする申立て等によることを必要とし,手続全体は例外なく電子情報処理組
織を用いてするという原則を守るべきである。
書面等による申立て等が認められるのは「やむを得ない事情があると認めるとき」に限定すべ
きであるので,(注3)で訴状審査権に類する審査権を創設するとされている点は賛成である。
書面等による申立等が認められる「やむを得ない事情」については,解釈の余地がある概念で
あり,その時点における IT 技術の進展や普及の状況にもよることとなるが,典型的に考えられる
事由としては,裁判所のシステムの故障や,災害等により一般的にインターネット利用が困難と
なる状況である。(注4)では,このような場合に時効の完成猶予との関係で新規の規定を設ける
考え方が示されており,賛成である。
インターネットを用いてする申立て等がやむを得ずできない場合に生ずる問題点としては,消
滅時効の完成猶予や出訴期間の問題にとどまらない。今後の倒産手続の IT 化も考慮すると,特に
倒産事件においては,通常の民事訴訟事件と比較して,事件の対象となる法律関係や事実関係が
急速に変化(事態の悪化)をしていくという倒産事件の特徴から,資産の散逸防止や事業継続の
ために緊急に倒産手続開始の申立てや保全処分の申立てが正式に受理されて,裁判所から必要な
処分が速やかに発令されなければならい場合がある。また,倒産手続においては,手続開始の申
立ては,相殺権行使の可否や否認権行使の可否の判断基準時になっているため,申立ての送信を
したけれども裁判所側が受信できない場合についてどのように救済するかなどの検討が必要であ
る。このように倒産手続の IT 化を考慮すれば,法律的な期限とは関係なく,申立て等が即時に受
理されて手続が進行する必要がある場合も「やむを得ない事情があると認めるとき」に該当する
として、書面等による申立て等が認められるべきである。また,電子情報処理組織を用いた申立
てができない障害が生じた場合に,必ずしもその障害の原因が何であるかや障害の責任がどこに
あるのかが直ちに判明するとは限らないので,例えば,電子情報処理組織を用いた申立てについ
て裁判所のシステムが受信したときは,受信した旨のメール等の通知が裁判所より届くことにす
るなどの工夫が必要であり,そのような通知が届かなかったときは,「やむを得ない事情があると
認めるとき」として書面等による申立て等を柔軟に認めることなどが考えられる。
そして,このような理由で書面等による申立て等が認められるべきことは,委任を受けた訴訟
代理人がいる場合かどうかで変わりはないので,甲案については,委任の受けた訴訟代理人につ
いても,「やむを得ない事情があると認めるとき」には書面による申立て等を認めるべきである。
但し,委任を受けた訴訟代理人が「やむを得ない事情があると認めるとき」に書面による申立て
を認めるべきとする趣旨は,上述のとおり電子情報処理組織を用いた申立てができない障害が生
じた場合であっても即時に倒産手続の申立て等をする必要がある場合を想定しているものである
から,委任を受けた訴訟代理人がいる場合には,インターネット利用環境等の不備や IT 機器への
未習熟をもって「やむを得ない事情があると認めるとき」にあたらないことは,当然のことであ
る。

2 インターネットを用いて裁判所のシステムにアップロードすることができる電磁的記録に
係るファイル形式

電子情報処理組織を用いて裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録す
る電磁的記録(電子的方式,磁気的方式その他人の知覚によっては認識することができない
方式で作られる記録であって,電子計算機による情報処理の用に供されるものをいう。以下
同じ。)に係るファイル形式について,次のような規律を設けるものとする。
(1) 電子情報処理組織を用いて裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記
録することができる電磁的記録に係るファイル形式は,解読方法が標準化されているも
のとする。
(2) 裁判所は,必要と認める場合において,当事者が電子情報処理組織を用いて裁判所の使
用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録したものに係るファイル形式と異な3
る他のファイル形式の電磁的記録を有しているときは,その者に対し,当該他のファイ
ル形式の電磁的記録を提供することを求めることができる。

【意見】
賛成する。

【意見の理由】
裁判所及び当事者の間で,電子情報処理組織を用いて申立てや資料提出等の手続がなされるの
であれば,標準化されたファイル形式でなければ当該電子データを電子計算機で読み取ることは
できないから,原則として解読方法が標準化されたファイル形式による提出を求めることは適切
であると考える。(注1)のように,当事者又はその代理人が身体の障害により相手方が提出した
電子データを読み取ることができない場合であって,当該電子データを提出した者が音声情報に
変換可能な情報を有する電子データを提出できるときは,裁判所は当事者の申立てにより当該音
声情報に変換可能な電子データの提供を求めることができるものとすものとすることも適切であ
ると考える。
また,裁判所が必要と認めるときには,特殊なファイル形式の電子データの提出を求めること
ができるものとすることも適切であると考える。特に,今後の倒産手続の IT 化を念頭に置くと,
大量の会計データを提出する必要がある場合や,大量の債権者が存在する事案において債権者一
覧表を提出する必要がある場合などは,エクセルやその他データベース形式のデータなど,書面
の代替としてのデータ(PDF など)ではない形式での提出を認めた方が便宜である場合がある。こ
のため,特に,民事裁判手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響することを想定して,(2)は裁判
所から求める場合に限らず,当事者が求めた場合にも,裁判所が相当と判断すれば,広く認める
ことができる内容とすべきと考える。

3 訴訟記録の電子化

(1) 訴訟記録は裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録されたものに
よるものとする。
(2) 書面で提出されたものを裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録
することについて,次のような規律を設けるものとする。
ア 裁判所は,書面で提出された訴状及び準備書面並びに証拠となるべきものの写し
について,裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録する。
イ 裁判所は,書面で提出されたアのものを【アによりファイルに記録された日からそ
の後の最初の期日が終了するまでの間】【アによりファイルに記録した旨の通知の
日から一定期間(例えば 2 週間)】保管しなければならない。

【意見】
賛成する。

【意見の理由】
近時,民事裁判の手続書類の作成は電子計算機(パソコン)を用いてするのが通常であり,電
子情報処理組織を用いて提出することを原則とすべきであるから,わざわざ印刷した紙を訴訟記
録とするよりも,電子データをそのまま訴訟記録とした方が便宜である。また,紙で提出された
ものを電子データ化して管理することも,その後の訴訟記録の保存や,検索・情報処理の便宜を
考慮すると,適切であると考える。特に民事裁判手続の IT 化が倒産手続の IT 化へ影響すること
を考えると,倒産手続においては大量の会計データを提出する必要があるときや,大量の債権者
が存在する事案における債権者一覧表の作成などは,エクセルやその他データベースなど,紙で
はない形式での提出や保管を認めた方が,便宜であるだけでなく,手続費用を削減するという利
点もある。また,債権者からの債権届出についてもインターネットを用いてすることができるよ
うにし,債権届出の内容を電磁的記録で保存することは,債権者の利便性の向上や手続費用の削
減に資する。このため,倒産手続の場合には,通常の民事訴訟よりも事件記録を電子記録で保存4
するメリットは大きいと考えられる。
但し,電子データは電子計算機の故障等により容易に失われるおそれもあることから,書面自
体についても一定の期間中は裁判所が保管しておくことは適切であると考える。また,同様の観
点から(注1)のように,正確なファイルの記録を求めることができるようにしておくことも必要
であると考える。
なお,(注2)については,電子データによる提出を促進する観点から,当事者が提出した書面
を裁判所が電子化する場合は,特段の事情がない限り,手数料を徴収することとすべきと考える。

第2 訴えの提起,準備書面の提出

電子情報処理組織を用いてする訴えの提起及び準備書面の提出は,最高裁判所規則で定め
るところにより,裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに電子訴状及び電子
準備書面を記録する方法によりするものとする。

【意見】
賛成する。なお,電子情報処理組織を用いてする提出に「裁判所の用意したフォームに必要事
項を記入することにより,裁判所の使用するサーバ(クラウドサーバを含む。)に電子データ形式
の訴状及び準備書面が生成されるという方式による提出」が含まれることを明記すべきである。

【意見の理由】
電子データの確実な提出,受領及び保存並びにセキュリティの観点から賛成する。補足説明で
は,「裁判所の用意したフォームに必要事項を記入することにより,裁判所の使用するサーバ(ク
ラウドサーバを含む。)に電子データ形式の訴状及び準備書面が生成されるという方式による提出」
が含まれ得ると説明されているが,この方法は,定型的な申立て等においては,利用者の利便性
を高めるすぐれた手段であることから,積極的に検討されるべきであり,その意味で中間試案で
もかかる方式が含まれることを明記すべきである。特に,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT
化へ影響することを考えると,倒産手続においては,個人の自己破産申立てや個人再生手続申立て,
各倒産手続における債権届出では,現在の実務においても定型的な書式が広く用いられており,
これらが裁判所のシステム上に用意したフォームに必要事項を記入することで,裁判所の使用す
るサーバ(クラウドサーバを含む。)に電子データ形式の申立書や債権届出書が生成されるという
方式で利用可能になれば,利用者の利便性を著しく高めると言える。
なお,中間試案には,「電子訴状」,「電子準備書面」という用語が用いられているが,その意味
が不明瞭であると思われる。「訴状」「準備書面」という用語は,書面による提出を念頭に置いた
用語というべきであり,IT 化された,訴状に記載されるべき事項,準備書面に記載されるべき事
項が,裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録されることで足りるのであり,
あたかも「書面」の形式を取ることを前提とするかのような用語とするのは適切ではない。
また,(注1)に関して,本人確認については,一般的に本人確認のために要する手続を準則化
することで手続全般を複雑化すべきではない。本人性が疑われる場合には,手続の種類に応じて,
個別に必要な範囲で対応することで足り,一律に電子署名を求める必要はないと考える。また,
署名押印も不要とすることは言うまでもない。
(注2)に関して,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化へ影響すると考えた場合,現在の
倒産手続の実務では,そのような濫用的申立てや,濫用的債権届出,濫用的異議申述などが,多
数の事案で生じているとは認識されていないと思われるため,濫用的な訴えの提起を防止するた
めの方策としてデポジットを支払うものとする規律については,少なくとも倒産手続においては
不要(準用しなくてよい)と考える。倒産手続では,現行法でも債権者申立ての手続等には,一
定の事実の疎明を求め,債務者自身の申立てと比較して高額の予納金の納付が求められるなど,
十分に濫用的な申立てに対する対応手段が存在しているからである。5

第3 送達

1 システム送達

電子情報処理組織を利用した送達方法(以下「システム送達」という。)について,次のよ
うな規律を設けるものとする。
⑴ 当事者,法定代理人又は訴訟代理人(以下本項,第4の2及び第12の4において「当
事者等」という。)は,最高裁判所規則で定めるところにより,次に掲げる事項(以下「通
知アドレス」という。)の届出をすることができる。
ア 電子メールアドレス(電子メール(特定の者に対し通信文その他の情報をその使用す
る電子計算機の映像面に表示されるようにすることにより伝達するための電気通信(有
線,無線その他の電磁的方式により,符号,音又は影像を送り,伝え,又は受けること
をいう。イにおいて同じ。)であって,最高裁判所規則で定める通信方式を用いるものを
いう。)の利用者を識別するための文字,番号,記号その他の符号をいう。)
イ アに掲げるもののほか,その受信をする者を特定して情報を伝達するために用いられ
る電気通信の利用者を識別するための文字,番号,記号その他の符号であって,最高裁
判所規則で定めるもの
⑵ 通知アドレスの届出をした当事者等に対する送達は,法第99条及び法第101条の規
定にかかわらず,裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに送達すべき電子
書類を記録し,通知アドレスの届出をした当事者等が電子情報処理組織を用いてその電子
書類の閲覧及び複製をすることができる状態に置き,通知アドレスの届出をした当事者等
の通知アドレスにその旨を通知してする。
⑶ ⑵による送達は,通知アドレスの届出をした当事者等が電子情報処理組織を用いて送達
すべき電子書類の閲覧又は複製をした時(通知アドレスの届出をした当事者等が二以上あ
るときは,最初に送達すべき電子書類の閲覧又は複製をした者に係る閲覧又は複製の時)
にその効力を生ずる。
⑷ 通知アドレスの届出をした当事者等が⑵の通知が発出された日から1週間を経過する日
までに送達すべき電子書類の閲覧又は複製をしないときは,その日が経過した時にその電
子書類の閲覧をしたものとみなす。

【意見】
賛成する。但し,委任を受けた訴訟代理人など,一定の範囲の者については,通知アドレスの
届出を義務付けることも検討すべきである。

【意見の理由】
補足説明でも指摘されているとおり,インターネットを用いた簡易・迅速な方法による送達と
いう観点からは,事件管理システムを用いた送達方法(システム送達)の採用には賛成である。
特に,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化へ影響すると考えた場合,倒産手続においても送
達の規定が存在するところ(破産法 34 項 7 項等),システム送達を用いた簡易・迅速な方法によ
る送達の趣旨は妥当するため,倒産手続における送達規定も同様のシステム送達が導入されるべ
きである。
但し,中間試案では,システム送達をすることができる相手方は,通知を受けるべきアドレス
(通知アドレス)の届出をした者に限られ,かつ,通知アドレスの届出が任意とされているとこ
ろ,手続の IT 化による利便性を高めるためには,通知アドレスの届出が広く行われ,システム送
達の利用が増えることが望ましい。前記第1の意見で述べたとおり,委任を受けた訴訟代理人は
インターネットによる通信の環境を当然に整備してこれを利用することが想定されるので,委任
を受けた訴訟代理人など,一定の範囲のものについては通知アドレスの届出を義務化すべきであ
る。これを倒産手続の IT 化の場面で考えた場合,倒産手続では,裁判所から選任を受ける等当然
に手続に関与することが想定されている当事者や機関が存在することから,一定の範囲の者(例
えば,破産管財人,再生債務者,更生会社,管財人,監督委員,個人再生委員等)については,通
知アドレスの届出を義務付けることを検討すべきである。6
なお,(注3)においては,送達を受けるべき者の責めに帰すべき事由以外の事由により,通知
を受領することができない場合等の取扱いについては引き続き検討するものとされている。シス
テム送達に際しては,事件管理システムの不具合等により通知が届かない場合も十分に想定され
るため,(技術的に立証可能かという問題は別途存在するものの,)(4)のみなし閲覧の例外規定を
設けるべきと考える。これは,倒産手続の IT 化においても同様である。
また,(注4)においては,通知アドレスの届出をしている者が複数いる場合に,そのうちの一
部の者を,送達を受けるべき者として届出し,それ以外(対象外)の者が電子書類の閲覧等をし
ても,送達の効力が生じないという規律を設ける考え方が検討されている。
もっとも,かかる規律を設けた場合,中間試案の補足説明でも指摘されているとおり,対象外
の者を通じることにより送達の効力を発生させずに送達すべき電子書類の内容を了知することが
可能となり得るという弊害が想定されるのであり,(当該弊害を回避する様なシステム設計が可能
な場合は別として、)基本的には消極的に解すべきと考える。むしろ,送達を受ける側において,
過度な範囲の者について届出をし,意図せずした送達の効力が生じない様に,適切な範囲で届出
をすべきである。

2 公示送達

法第111条を次のように改めるものとする。
⑴ 公示送達は,電磁的方法により不特定多数の者が公示すべき内容である情報の提供を受
けることができる状態に置く措置であって最高裁判所規則で定めるものをとる方法によ
りする。
⑵ ⑴における公示すべき内容は,裁判所書記官が送達すべき電子書類を裁判所の使用に係
る電子計算機に備えられたファイルに記録し,いつでも電子情報処理組織を用いて送達を
受けるべき者に閲覧又は複製をさせ,又は送達を受けるべき者にその内容を出力した書面
を交付すべきこととする。

【意見】
賛成する。

【意見の理由】
補足説明でも指摘されているとおり,当事者の利便性を向上し,公示の効果を実質化する観点
からは,インターネットを用いた公示送達の採用に賛成である。また,民事訴訟手続の IT 化が倒
産手続の IT 化に影響すると考えた場合,倒産手続においても公示送達の規程は準用されるところ
(破産法 13 条等),同様に電磁的方法により不特定多数の者に公示する方法を可能とすべきと考
える。
但し,倒産手続においては公示送達が利用される場面は限定的である様に思われ,むしろ,官
報公告(破産法 10 条等)が多数の関係者への通知等に代替し,又は,当事者の善意悪意の推定の
基準となるなど重要な機能を担っている。この点,現状の官報による公告は一次的には紙媒体で
あり,入稿から掲載まで一定の期間を要し,また,(インターネット版官報よりも)検索性に劣る
点も指摘される。
そこで,倒産手続の IT 化においては,公告を電磁的方法により不特定多数の者が公告すべき内
容である情報の提供を受けることができる状態に置く措置(すなわち,インターネットを通じて,
不特定多数の者による公告の閲覧を可能にすること)により行うことを検討すべきである。例え
ば,補足説明においては,公示送達を裁判所のウェブサイト上に公示する方法が指摘されている
が,同様に,裁判所のウェブサイト(又は官報が掲載されるウェブサイト)上に公告を掲載する
方法が考えられる。
但し,公告の内容の中には,関係当事者の個人が特定される情報やプライバシーに係る情報が
含まれている場合も多く,インターネットによる情報の伝播性等に鑑みると,掲載内容や掲載期
間その他関係当事者のプライバシーへの配慮については検討を要すると思われる。7

第4 送付

1 当事者の相手方に対する直接の送付

当事者の相手方に対する直接の送付は,次に掲げる方法によることができるものとする。た
だし,通知アドレスの届出をした相手方に対する直接の送付は,次に掲げる方法のうち⑴によ
るものとする。
⑴ 裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに送付すべき電子書類を記録し,
通知アドレスの届出をした相手方が電子情報処理組織を用いてその電子書類の閲覧又は
複製をすることができる状態に置き,当該相手方の通知アドレスにその旨を自動的に通知
してする方法(通知アドレスの届出をした相手方に対するものに限る。)
⑵ 送付すべき書類の写し又は送付すべき電子書類に記録された情報の内容を出力した書面
の交付

【意見】
賛成する。

【意見の理由】
補足説明でも指摘されているとおり,民事裁判手続の IT 化を進めるにあたり,当事者の相手方
に対する直接の送付について,現行法における「送付すべき書類の写しの交付又はその書類のフ
ァクシミリを利用しての送信」の方法(民事訴訟規則 47 条)を維持する必要性はなく,むしろ訴
訟記録の電子化の観点からは,システム送達と同様の方法による送付を認めるべきである。
この点,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考えた場合,倒産手続には民事
訴訟規則 47 条が準用されるところ(破産規則 12 条等),同様に,当事者の相手方に対する直接の
送付について,システム送達と同様の方法による送付を認めるべきである。さらに,倒産手続に
おいては,多数の利害関係人が参加するため,破産管財人,再生債務者等,更生管財人がこれら
利害関係人へ書類等の送付をする場合の事務負担が大きい場合もあることから,(1)(2)の方法以
外にも,裁判所が相当と認める方法を広く許容することを検討すべきである。

2 裁判所の当事者等に対する送付

裁判所の当事者等に対する送付は,次に掲げる方法によることができるものとする。ただし,
通知アドレスの届出をした当事者等に対する送付は,次に掲げる方法のうち⑴によるものとす
る。
⑴ システム送達(通知アドレスの届出をした当事者等に対するものに限る。)
⑵ 送付すべき書類の写し又は送付すべき電子書類に記録された情報の内容を出力した書面
の交付

【意見】
賛成する。

【意見の理由】
補足説明でも指摘されているとおり,民事裁判手続の IT 化を進めるにあたり,裁判所から当事
者に対する送付について,現行法における「送付すべき書類の写しの交付又はその書類のファク
シミリを利用しての送信」の方法(民事訴訟規則 47 条)を維持する必要性はなく,むしろ訴訟記
録の電子化の観点からは,システム送達の方法による送付を認めるべきである。
この点,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考えた場合,倒産手続には民事
訴訟規則 47 条が準用されるところ(破産規則 12 条等),同様に,裁判所の当事者等に対する送付
についてシステム送達を認めるべきである。さらに,倒産手続においては,多数の利害関係人が
参加するため,裁判所から行う送付事務の負担も大きい場合があることから,(1)(2)の方法以外
にも,裁判所が相当と認める方法を広く許容することを検討すべきである。
また,民事訴訟規則には「送付」とは異なる概念として「通知」が存在し,これは「相当と認め8
る方法」によることができる(民事訴訟規則 4 条 1 項)。そして,同項は,倒産手続においても準
用されており(破産規則 12 条等),裁判所からの通知や裁判所から通知事務の取り扱いを委ねら
れた破産管財人による通知(破産規則 7 条)等も「相当と認める方法」によることができること
から,かかる「相当と認める方法」には,システム送達と同様の方法が含まれるとともに,現行
法で「相当と認める方法」として認められているその他の手段(郵便,新聞広告,メール送信,ウ
ェブサイトへの掲載等)も,変わらず「相当と認める方法」として認められるべきである。

第11 訴訟の終了

1 判決

(1) 電子判決書の作成及び判決の言渡し
電子判決書の作成及び判決の言渡しについて,次のような規律を設けるものとする。
ア 判決は,電磁的記録により作成する。
イ アで作成された電磁的記録(以下本項において「電子判決書」という。)に記録され
た情報については,作成主体を明示し,改変が行われていないことを確認すること
ができる措置をしなければならない。
ウ 判決の言渡しは,電子判決書に基づいてする。
(2) 電子判決書の送達
電子判決書を当事者に送達しなければならないことを前提として,電子判決書の送達
について次のような規律を設けるものとする。
ア 電子判決書の送達は,裁判所の使用に係る電子計算機に備えられたファイルに記録
された電子判決書の内容を書面に出力したものをもってする。
イ アの規律に関わらず,通知アドレスの届出をした者に対する電子判決書の送達は,
システム送達によってする。

【意見】
賛成する。

【意見の理由】
訴訟記録の電子化との平仄から,判決書も電磁的記録によることが適切であると考える。そし
て,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考えた場合,倒産手続の IT 化において
も,決定書は電磁的記録で作成される電子決定書となるべきと考える。
なお,倒産手続の IT 化の観点からは,たとえば,現行破産法では,裁判所が発行する各種証明
書は,利害関係人の請求があって初めて発行されるものとされているところ(破産法 11 条 2 項),
実務上,破産管財人や債権者が発行を求める破産手続廃止証明書や破産手続終結証明書等は,裁
判所のウェブサイトを通じて発行される(または,発行の申請がウェブサイト上で簡易に行える)
ようにすることが,利用者の利便性を高めると考えるので,検討されるべきである。

2 和解

(1) 和解の期日
和解の期日(和解を試みるための期日のことをいう。以下同じ。)について,法第 89 条
に次の規律を加えるものとする。
ア 裁判所は,相当と認めるときは,当事者の意見を聴いて,最高裁判所規則で定める
ところにより,裁判所及び当事者双方が音声の送受信により同時に通話をすること
ができることができる方法によって,和解の期日における手続を行うことができる。
イ アの期日に出頭しないでアの手続に関与した当事者は,その期日に出頭したものと
みなす。
ウ 第 148 条<裁判長の訴訟指揮権>,第 150 条<訴訟指揮権に対する異議>,第 154
条<通訳人の立会い等>及び第 155 条<弁論能力を欠く者に対する措置>の規定
は,和解について準用する。9
エ 受命裁判官又は受託裁判官が和解の試みを行う場合には,ウの規定による裁判所又
は裁判長の職務は,その裁判官が行う。
(2) 受諾和解
法 264 条を次のように改めるものとする。
当事者が出頭することが困難であると認められる場合において,その当事者があらか
じめ裁判所又は受命裁判官若しくは受託裁判官から提示された和解条項案を受諾する
旨の書面を提出し,他の当事者が口頭弁論等の期日(口頭弁論,弁論準備手続又は和解
の期日をいう。)に出頭してその和解条項案を受諾したときは,当事者間に和解が調っ
たものとみなす。
(3) 新たな和解に代わる決定
新たな和解に代わる決定について,次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】
ア 裁判所は,和解を試みたが和解が調わない場合において,審理及び和解に関する手
続の現状,当事者の和解に関する手続の追行の状況を考慮し,相当と認めるときは,
当事者の意見を聴いて,当事者双方のために衡平を考慮し,一切の事情を考慮して,
職権で,事件の解決のために必要な和解条項を定める決定(以下本項において「和
解に代わる決定」という。)をすることができる。
イ 和解に代わる決定に対しては,当事者は,その決定の告知を受けた日から 2 週間の
不変期間内に,受訴裁判所に異議を申し立てることができる。
ウ イの期間内に異議の申立てがあったときは,和解に代わる決定は,その効力を失う。
エ 裁判所は,イの異議の申立てが不適法であると認めるときは,これを却下しなけれ
ばならない。
オ イの期間内に異議の申立てがないときは,和解に代わる決定は,裁判上の和解と同
一の効力を有する。

【乙案】
新たな和解に代わる決定の規律を設けない。

【意見】
(1)及び(2)については賛成する。(3)については,【甲案】に賛成する。

【意見の理由】
民事訴訟手続の IT 化という観点からは,(1)和解の期日及び(2)受諾和解に係る和解手続の柔軟
化は,和解による紛争解決について当事者の手続上の負担を軽減するものであり,特段異議を述
べる理由はないので賛成する。この点,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考
えた場合,倒産手続においても倒産債権の確定や否認権行使の場面において,和解による解決を
する場面もあると考えられ,(1)及び(2)は和解による紛争解決について手続上の負担を軽減する
といえる。
(3)新たな和解に代わる決定については,和解による紛争解決の可能性を広げる制度として賛成
する。むしろ,倒産手続との関係では,私的整理手続に関連して,実務上も民事調停法 17 条の決
定が利用される場合があり,調停手続に限定することなく和解に代わる決定の手続が利用できる
ことになれば,債権者と債務者の話し合いによる解決の機会が広がることにもつながるので,【甲
案】により明文で制度化されることが望ましいと考えられる。

第12 訴訟記録の閲覧等

1 裁判所に設置された端末による訴訟記録の閲覧等

⑴ 訴訟記録の閲覧
何人も,裁判所書記官に対し,裁判所においてする訴訟記録(第1の3の電子化後のも
のに限る。以下第12の1から3までにおいて同じ。)の閲覧を請求することができるもの
とする。公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については,当事者及び利害関係を疎明
した第三者に限り,裁判所においてする訴訟記録の閲覧の請求をすることができるものと10
する。
⑵ 訴訟記録 の複製等
当事者及び利害関係を疎明した第三者は,裁判所書記官に対し,裁判所においてする訴
訟記録の複製,その正本,謄本若しくは抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付
を請求することができるものとする。
⑶ 裁判所に設置された端末による閲覧等をすることができない場合
⑴による訴訟記録の閲覧の請求及び⑵による訴訟記録の複製の請求は,訴訟記録の保存
又は裁判所の執務に支障があるときは,することができないものとする。

【意見】
賛成する。

【意見の理由】
民事訴訟手続の IT 化という観点からは,裁判所に設置された端末等による訴訟記録の閲覧等
は,簡易に訴訟記録にアクセスできるようになるという点において利用者の利便性に資すると考
えられるので賛成する。もっとも,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考えた
場合,倒産手続における事件記録の閲覧等に係る手続は,「公開を禁止した口頭弁論の調書」等の
複製等の手続と同様の規律にすること及び現行倒産法における「支障部分の閲覧等の制限」の定
め(破産法 12 条等)が維持されることを前提に賛成する。すなわち,倒産手続の IT 化において
は,倒産手続における閲覧等の手続では,「当事者」としての閲覧の定めは置かずに,現行法同様
に「利害関係人」のみが閲覧等できることとし,閲覧等の請求に際しては一律に利害関係がある
ことの疎明を要するものとすべきである。もっとも任意の裁判所に設置された端末から任意の事
件の訴訟記録を閲覧できるとなると,事件が係属しない裁判所では「利害関係」の有無の判断が
困難であるほか,裁判所やそのシステムに過大な負担となる恐れがあることに留意する必要があ
ろう。
なお,(注3)に関して,当事者以外の第三者が閲覧等の請求をすることができるようになる時
期について,閲覧等の制限の申立を行う機会を保障するために,第三者の閲覧等に供するにふさ
わしい一定の時期とする規律を設けること,及び,(注4)に関して,閲覧等の手数料とは別に,
事件係属中の当事者を含め,裁判所に設置された端末の利用料金として一定の手数料を徴収すべ
きとすることについては,賛成する。

2 裁判所外の端末による訴訟記録の閲覧及び複製

⑴ 当事者による閲覧等
当事者は,いつでも,電子情報処理組織を用いて,裁判所外における訴訟記録の閲覧及
び複製をすることができるものとする。
⑵ 利害関係を疎明した第三者による閲覧等
利害関係を疎明した第三者は,裁判所書記官に対し,電子情報処理組織を用いてする裁
判所外における訴訟記録の閲覧及び複製を請求することができるものとする。
⑶ 利害関係のない第三者による閲覧
利害関係のない第三者による電子情報処理組織を用いてする裁判所外における訴訟記録
の閲覧に関する規律については,次のいずれかの案によるものとする。

【甲案】
当事者及び利害関係を疎明した第三者以外の者は,裁判所書記官に対し,電子情報処理
組織を用いてする裁判所外における訴訟記録(次に掲げるものに限る。)の閲覧を請求する
ことができる。ただし,公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録については,この限りで
ない。
ア 訴状及び答弁書その他の準備書面
イ 口頭弁論の期日の調書その他の調書(調書中の証人,当事者本人及び鑑定人の陳述,
検証の結果並びに和解が記載された部分を除く。)
ウ 判決書その他の裁判書11

【乙案】
利害関係のない第三者による電子情報処理組織を用いてする裁判所外における訴訟記録
の閲覧を認めない。
⑷ 裁判所外の端末による閲覧等をすることができない場合
⑴による訴訟記録の閲覧及び複製,⑵による訴訟記録の閲覧及び複製の請求並びに⑶に
よる訴訟記録の閲覧の請求は,訴訟記録の保存又は裁判所の執務に支障があるときは,す
ることができないものとする。訴訟の完結した日から一定の期間が経過したときも,同様
とするものとする。

【意見】
(1),(2)及び(4)について賛成する。(3)については当研究会としては意見を述べない。

【意見の理由】
民事訴訟手続の IT 化という観点からは,裁判所外の端末等による訴訟記録の閲覧等は,より簡
易に訴訟記録にアクセスできるようになるという点において利用者の利便性を高めると考えられ
るので賛成する。民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考えた場合においても,
(1),(2)及び(4)については,倒産手続において閲覧等の制限の定めが維持されることを前提にす
れば,利害関係人の利便性を高めるものであり賛成する。但し,倒産手続の IT 化においては,閲
覧等の手続において「当事者」としての閲覧の定めは置かずに,現行法同様に「利害関係人」の
みが閲覧等できることとし,閲覧等の請求に際しては一律に利害関係があることの疎明を要する
ものとすべきである。 (3)については,民事訴訟手続特有の手続と解され,倒産手続では異議訴
訟等においてのみ対象となるが,民事訴訟の公開の原則との関係で整理すべき問題であり,当研
究会では特に意見を述べない。

3 インターネットを用いてする訴訟記録の閲覧等の請求

電子情報処理組織を用いてする1による訴訟記録の閲覧,複製,その正本,謄本若しくは
抄本の交付又は訴訟に関する事項の証明書の交付の請求及び2による訴訟記録の閲覧又は複
製の請求は,最高裁判所規則で定めるところにより,裁判所の使用に係る電子計算機に備え
られたファイルに当該請求を記録する方法によりするものとする。

【意見】
賛成する。但し,閲覧等の請求者の本人確認及び利害関係の有無の確認の手続について引き続
き慎重な検討が必要である。

【意見の理由】
民事訴訟手続の IT 化という観点からは,利用者の利便性を高めるためにインターネットを用い
て訴訟記録の閲覧等ができることは必須であるというべきであり,賛成である。特に,民事訴訟
手続の IT 化が倒産法手続の IT 化に影響すると考えた場合,倒産手続では,債権者等の多数の利
害関係人が手続に参加し,かつ,手続内で利害関係人へ積極的に情報提供ができるようにすべき
であるところ,特にインターネットを用いてする事件記録の閲覧のシステムが構築されるとその
有用性は高いというべきである。
但し,閲覧等の請求者の本人確認及び利害関係の有無の確認の手続をどのようにするかは,シ
ステムの利便性と安全性のバランスをどのように取るかという観点から,慎重に検討されるべき
である。
特に,倒産手続における事件記録の閲覧等を考えた場合に,前述のとおり,倒産手続では債権
者等の多数の利害関係人による事件記録の閲覧等に関して利便性を高めるべきである一方,倒産
事件の事件記録には,関係者の信用情報や個人情報などの秘密性の高い情報が存在し,目的外利
用されるおそれや消費者被害の倒産事件の場合には債権者である消費者に二次被害を生じさせる
おそれがあるので,利害関係人以外の者による閲覧等や事件記録の目的外利用を防ぐ必要がある。
これらの事件記録等の閲覧等が容易になることに伴う弊害を防ぐために,倒産手続の IT 化におい12
ては,裁判所は,事件記録の提出者に対して,事件記録となる電子データとは別に,閲覧等に供
するための電子データの作成及び提出を求めることができ,利害関係人による閲覧等に際しては,
閲覧等に供するために作成された電子データによって閲覧等の対応をすることを認めるべきであ
る。

4 閲覧等の制限の決定に伴う当事者の義務

法第92条第1項の決定があったときは,当事者等又は補佐人は,その訴訟において取得
した同項の秘密を,正当な理由なく,当該訴訟の追行の目的以外の目的のために利用し,又
は当事者等及び補佐人以外の者に開示してはならないものとする。

【意見】
賛成する。公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録についても,閲覧等をした利害関係人に対
して,同様の義務を定めるべきである。

【意見の理由】
閲覧等の制限の決定に伴う当事者の義務を定めることは,閲覧等の制限の実効性を高めるため
に賛成である。その趣旨は公開を禁止した口頭弁論に係る訴訟記録についても同様であるので,
閲覧等を受けた当事者及び利害関係を疎明した第三者は,正当な理由なく,目的外利用や第三者
への開示をすることを禁じられるべきである。
このことは,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考えた場合,手続が非公開
である倒産手続における事件記録の閲覧等においても同様であり,倒産手続において利害関係人
として事件記録の閲覧等をした場合には,当該事件記録について,正当な理由なく,目的外利用
や第三者への開示をすることを禁じるべきである。

第16 手数料の電子納付

1 インターネットを用いてする申立てがされた場合における手数料等の電子納付への一本化

電子情報処理組織を用いてする申立てがされる場合には,手数料及び手数料以外の費用
(3において「手数料等」という。)の納付方法について,ペイジーによる納付の方法に一本
化するものとする。

【意見】
賛成する。但し,将来的にはペイジーに限らず,他の決済方法を広く採用することを検討すべ
きである。

【意見の理由】
補足説明でも指摘されているとおり,当事者の利便性向上の観点からは,ペイジー以外の他の
決済方法も採用すべきである。
但し,補足説明でも指摘されているとおり,複数の決済方法の導入については,システムの構
築費用,運営費用等の面から,直ちに実施すべきかについては検討を要する点は否めない。その
ため,ペイジーによる納付の方法の導入後の運用状況も踏まえつつ,他の決済方法の採用につい
ては継続的に検討すべきである。
また,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考えた場合,倒産手続における予
納金等の納付についても,電子納付が認められるべきである。

2 郵便費用の手数料への一本化

郵便費用を手数料として扱い,申立ての手数料に組み込み一本化し,郵便費用の予納の制
度を廃止するものとする。

【意見】13
賛成する。

【意見の理由】
民事訴訟手続の IT 化によって,訴訟手続内での郵便の利用が減少することが予想されることか
ら,当事者も郵便費用について郵券で納付をすることは負担となるものと考えられる。この点は,
民事訴訟手続の IT 化が倒産手続の IT 化に影響すると考えた場合,倒産手続における郵便費用の
予納においても同様と考える。
3 書面による申立てが許容される場合における手数料等の納付方法
仮に電子情報処理組織を用いてする申立てに加え,書面による申立てが一定の場合に許容
されることとなった場合(第1の1参照)であっても,書面による申立てについては,手数
料等の納付方法につき,やむを得ない事情があると認めるときを除き,ペイジーによる納付
の方法によらなければならないものとする。
上記のやむを得ない事情があると認めるときの納付方法の規律については,現行の費用法
第8条の規律を維持するものとする。

【意見】
賛成する。

【意見の理由】
上記のとおり,書面による申立てはやむを得ない事情があると認める場合に限定されるべきで
あるが,そのようなやむを得ない事情があると認める場合であっても,手数料等の納付について
は,なおぺイジーによって行うことが可能であることも相当程度あると考えられるため(銀行A
TMの利用など),手数料等の納付方法について,やむを得ない事情があると認めるときを除き,
ぺイジーによる納付によるとすることに賛成である。この点は,民事訴訟手続の IT 化が倒産手続
の IT 化に影響と考えた場合,倒産手続における予納金等の納付においても同様と考える。
法制審議会民事訴訟法(IT 化関係)部会での議論全般に対する意見

【意見】
中間試案で議論がされている民事訴訟手続の IT 化が,民事訴訟手続内の決定・命令の手続や,
民事非訟手続にどのように反映(準用)されるのかを意識して議論がされるべきである。民事訴
訟手続が準用される他の民事裁判手続について,民事訴訟手続の IT 化が実現するのと同時に,こ
れらの他の手続においても手続の IT 化が円滑になされるように立法化とシステムの整備を進め
るべきである。

【意見の理由】
中間試案は,民事裁判手続の中で,民事訴訟手続における判決手続の IT 化の議論だけが先行し
ているように思われる。民事裁判手続内での決定・命令の手続や,民事訴訟手続以外の民事非訟
手続にどのように民事訴訟手続の IT 化の規律が反映されるのかは不明であるが,民事裁判手続の
中には,民事訴訟法の定めを一般的に準用している手続もあり,民事訴訟手続の IT 化が実現する
のと同時に,民事訴訟法を一般的に準用している他の民事裁判手続の IT 化がされていなければ,
IT 化された手続と IT 化されていない手続が混在して,手続の運用が混乱するとともに非効率と
なる。たとえば,倒産法では民事訴訟法が一般的に準用されている(破産法 13 条,民事再生法 18
条,会社更生法 13 条)ことから,このような準用規定に基づけば,民事訴訟法の改正による民事
訴訟手続の IT 化が実現すると同時に,倒産手続の一部については民事訴訟法上の IT 化に関する
定めが倒産法へも準用されることになる。具体的には,債権確定訴訟(破産法 126 条等),否認決
定異議訴訟(破産法 175 条等),役員責任異議訴訟(破産法 180 条等)について,民事訴訟手続の
IT 化がそのまま反映されることになるが,これらの倒産法が定める訴訟手続は,倒産手続の中で
は,債権調査確定手続(債権届出,債権調査,債権査定手続),否認請求手続,役員責任査定手続14
のように,民事訴訟法には定めのない手続から連続している手続である。そのため,IT 化されて
いない倒産手続と,IT 化された民事訴訟手続が併存する事態となると,事件記録の電子化がどの
ようにされるべきか,送達や閲覧等の手続がどのようになるのかなどが不明であり,手続の円滑
な運用に支障を来す懸念がある。IT 化された訴訟手続への連続性を考えれば,たとえば,債権確
定訴訟の前の段階の手続である債権届出,債権調査,債権査定決定の各手続も IT 化がされるべき
であり,効率的にシステムを設計するという観点でも,早期に債権届出調査手続の IT 化が検討さ
れるべきである。したがって,民事訴訟手続の IT 化の進捗に遅れることなく,倒産手続の IT 化
に関する立法上の手当や倒産手続特有のシステムの構築も含めた検討・準備が,民事訴訟手続の
IT 化と並行してなされるべきであり,法制審部会における今後の議論においてもそのことが意識
されるべきである。


以上倒産手続の IT 化研究会 委員等名簿
(敬称略、五十音順)
座長
杉本 純子(日本大学法学部法律学科教授)
委員
上野 保(弁護士、元木・上野法律会計事務所)
大石 健太郎(弁護士、大石法律事務所)
大川 剛平(弁護士、長島・大野・常松法律事務所)
尾島 史賢(弁護士、尾島法律事務所)
小田切 豪(弁護士、三宅・今井・池田法律事務所)
小畑 英一(弁護士、TF法律事務所)
鐘ヶ江 洋祐(弁護士、長島・大野・常松法律事務所)
菅野 邑斗(弁護士、TMI 総合法律事務所)
小林 信明(弁護士、長島・大野・常松法律事務所)
小林 悠紀(弁護士、土橋・小林法律事務所)
富永 浩明(弁護士、富永浩明法律事務所)
中森 亘(弁護士、北浜法律事務所)
俣野 紘平(弁護士、西村あさひ法律事務所)
松尾 幸太郎(弁護士、みなと協和法律事務所)
蓑毛 良和(弁護士、三宅・今井・池田法律事務所)
四十山 千代子(弁護士、株式会社三井住友銀行)
渡邊 一誠(弁護士、弁護士法人大江橋法律事務所)

以上

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