【裁判例紹介】特例有限会社が破産手続開始前の清算手続中に債権者に対して弁済した金員を破産管財人が会社法484条3項に基づいて取り戻すことができるとした事例

・福岡高裁那覇支部令和2年2月27日

・取戻権は、債権者が債権全額の支払を受けることを前提とする清算手続中にされた支払等によって破産債権者間の公平が害されることを防ぐという独自の趣旨・目的から、当該支払等について特別にその取戻権を定めたものであり、否認権とは別個独立の権利であるから、取戻権に否認権における規律を及ぼすことが直ちに求められるわけではない。

・取戻権は、債権者等が清算手続の中で支払等を受けたものの、清算手続が結了する前に清算会社の破産手続開始決定がされるという限定された場合においてのみ行使し得るものであり、取戻権を行使し得る時期等を画する清算手続の開始・結了や破産手続開始決定は、登記によって公示され、支払等の相手方において認識し得る。

・そうすると、相手方の主観等を問わず、これを行使できるとしても、取引の安全への影響は限定的なものであり、それが著しく不当であるということはできない。

・掲載誌:金融法務事情2136号(2020.4.25)72頁、同2150(2020.11.25)(村上健)、金融商事判例1593(2020.6.15)号14頁、銀行法務21№859(2020.8)66頁(浅井弘章)

・投稿者:弁護士 菅野邑斗

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